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執筆者の写真黒子 花

『遥か彼方の声を聞きながら……、2年目』

更新日:2023年11月20日





 新緑香る森の中で、俺は穴を掘っていた。


「またラジオ聞いてるね!」

 ウタさんが厳しい目で俺を見てきた。

「いいじゃないですか。どうせ、まだ遺跡は出てこないですよ」

「そう言いながら、石像壊したの誰?」

「しーましぇん(すいません)」


 先日、遺跡を発掘中に英雄の石像を壊してしまったことを咎めているのだ。

 フラワーアピスという小さな蜂の魔物が飛びまわり、春の花が咲き誇る中、俺は姉のようなウタさんに怒られていた。


 エルフの国の大森林で、石の精霊が祀られていたこと自体が非常に珍しいことだ。さらに利権をむさぼり大理石などで建物を建てていたハイエルフたちとは違い、ちゃんとエルフの英雄の姿を形作っていたことに、考古学者であるウタさんの情熱に火をつけた。


「古代のエルフは、今よりも現実的だったんじゃないかと思うの。精霊信仰が強いエルフの国で英雄の石像を建てるなんて……、実に興味深い」


 考古学者は地質から、石像が2000年前のものであることを推定した。




 新年を過ぎ、学校では再建後初めての試験がいくつかあった。

 俺は魔道具学と家庭科の授業ぐらいしかとっていなかったので、試験は実技だけ。しかも魔道具学に関してはラジオ局を作ったので免除。家庭科の授業では、クッキーを作って終わった。焦げないようにするだけで満点を貰えるのは、自己肯定感が高まる。


 校舎脇に生えてしまった世界樹を切り倒して、ラジオの放送をしていたら、いつの間にか卒業式があり、最高学年のゲンズブールさんと塔の魔女たちが揃って卒業していった。


「右も左もわからない俺によくしてくれてありがとうございます」

「こっちは君のせいで右と左がわからなくなりそうだったよ。ラジオは貰っていくよ」

 ゲンズブールさんは女戦士の許嫁と一緒に、魔族領へと旅立った。魔族の大統領であるボウさんに連絡を取ると、二つ返事で「来てくれ」とのことだった。


 そんな卒業式を終え、だらだらと春休みを送ろうとしたら、ボウさんの娘であるウタさんから招集がかかった。


『エルフの国で新発見があったみたいだから、発掘準備をしておいて。クーべニアでピックアップするから』


 一方的な呼び出しだったが、スケジュールはすでに抑えられていて、ラジオ放送は休止。いつの間にか親とも現地で会うことになっていて、現地到着後はすぐに発掘作業に入ることになった。


 発掘調査は、子どもの頃からウタさんに駆り出されていたので慣れている。はずだったが、早々にやらかしてしまい、こっぴどく叱られた。


 親父とお袋は、エルフの国に来てすぐ俺を置いて二人でデートしている。仕事の休みはそれほどない二人なので、一緒にいる時に思い切り遊びたいのだとか。


「子どもが置いてけぼりになっている状況ってどうなんでしょうか」

「コウジは気にしてないでしょ」

 ウタさんも親子関係はドライでいいと思っているらしい。

「気にしてないんですけどね。俺を口実に使ってるな、と思って」



 新緑香る森の中で、俺は穴を掘っていた。




「またラジオ聞いてるね!」


 ウタさんが厳しい目で俺を見てきた。


「いいじゃないですか。どうせ、まだ遺跡は出てこないですよ」


「そう言いながら、石像壊したの誰?」


「しーましぇん(すいません)」




 先日、遺跡を発掘中に英雄の石像を壊してしまったことを咎めているのだ。


 フラワーアピスという小さな蜂の魔物が飛びまわり、春の花が咲き誇る中、俺は姉のようなウタさんに怒られていた。




 エルフの国の大森林で、石の精霊が祀られていたこと自体が非常に珍しいことだ。さらに利権をむさぼり大理石などで建物を建てていたハイエルフたちとは違い、ちゃんとエルフの英雄の姿を形作っていたことに、考古学者であるウタさんの情熱に火をつけた。




「古代のエルフは、今よりも現実的だったんじゃないかと思うの。精霊信仰が強いエルフの国で英雄の石像を建てるなんて……、実に興味深い」




 考古学者は地質から、石像が2000年前のものであることを推定した。








 新年を過ぎ、学校では再建後初めての試験がいくつかあった。


 俺は魔道具学と家庭科の授業ぐらいしかとっていなかったので、試験は実技だけ。しかも魔道具学に関してはラジオ局を作ったので免除。家庭科の授業では、クッキーを作って終わった。焦げないようにするだけで満点を貰えるのは、自己肯定感が高まる。




 校舎脇に生えてしまった世界樹を切り倒して、ラジオの放送をしていたら、いつの間にか卒業式があり、最高学年のゲンズブールさんと塔の魔女たちが揃って卒業していった。




「右も左もわからない俺によくしてくれてありがとうございます」


「こっちは君のせいで右と左がわからなくなりそうだったよ。ラジオは貰っていくよ」


 ゲンズブールさんは女戦士の許嫁と一緒に、魔族領へと旅立った。魔族の大統領であるボウさんに連絡を取ると、二つ返事で「来てくれ」とのことだった。




 そんな卒業式を終え、だらだらと春休みを送ろうとしたら、ボウさんの娘であるウタさんから招集がかかった。




『エルフの国で新発見があったみたいだから、発掘準備をしておいて。クーべニアでピックアップするから』




 一方的な呼び出しだったが、スケジュールはすでに抑えられていて、ラジオ放送は休止。いつの間にか親とも現地で会うことになっていて、現地到着後はすぐに発掘作業に入ることになった。




 発掘調査は、子どもの頃からウタさんに駆り出されていたので慣れている。はずだったが、早々にやらかしてしまい、こっぴどく叱られた。




 親父とお袋は、エルフの国に来てすぐ俺を置いて二人でデートしている。仕事の休みはそれほどない二人なので、一緒にいる時に思い切り遊びたいのだとか。




「子どもが置いてけぼりになっている状況ってどうなんでしょうか」


「コウジは気にしてないでしょ」


 ウタさんも親子関係はドライでいいと思っているらしい。


「気にしてないんですけどね。俺を口実に使ってるな、と思って」







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ということで、二年目を書き始めてはいる。

が、どうせ長くなりそうだし、『駆除人』の息子の話は横軸(世界の広さ)と言うより、縦軸(歴史)になっていきそうなので、書く前から気後れしている。


エルフの寿命はそもそも長いから、生きている老人に語らせるのも面白いとは思う。


最近、休みながら本を読んでいて、分析にも技術が必要なんだということがわかった。人工知能との会話でも痛感している。


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