ということで駆除人(原液)再販シリーズの第3弾出ました。
サーズデイという島の話がある。木曜島という貝ボタンの貝をとっていた島をモチーフにサンゴ礁やキーストーン種について書いていたが、紀伊半島出身の人たちが出稼ぎとして行った場所だ。
再出版するにあたり、もう一度調べてみるとやはり非常に面白い。
串本町(木曜島の真珠と白蝶貝の採取の物語)
書いていた当時は生物多様性についての本を読み、生物学者アルフレッド・ラッセル・ウォレスに嵌り、さらに七福神の恵比寿信仰について読みながら、急いで書いた覚えがある。
特に締め切り追われるわけでもなく、今回はゆっくり思い出してみると、やはり司馬遼太郎の『木曜島の夜会』には影響を受けた。
司馬遼太郎作品はいくつか読んでいるが、基本的にシリーズ物で長編小説が多いが、自分は短編小説も好きだ。これは村上春樹もそうだけど、長編小説化が書く短編小説は本質が詰まっているような気がして、後に考える余白もあり、読み心地もいい。
もう一つ潜水士もので言うなら伊丹十三の『日本世間噺大系』に収録されている黄色い潜水服が面白かった覚えがある。
センスってこういうことだよな、思える短編だが、すっと腹に落ちる感覚がある。
自分の作品に戻ると、やはり初期の頃は荒っぽいというか、力技で画作りを考えてたのがよくわかる。
再版すると以前の自分と対話しているような気分で、ベタベタとした感情を動かす話はセンスがないなと思っていたようだ。向田邦子とか橋本治とかを読み過ぎて、これより感動するような話は書けないと諦めていたのかもしれない。今も、感動させるような話よりもドキュメンタリーっぽい話の方が好きだし、映画や映像もそういう作品を好んで見ている。
時代劇が嫌いなわけじゃないけれど、考えたい人間としては堀田善衛や井上ひさしの本を今でもお守り代わりに読んでいる。
今回の場所はヴァージニア大陸から出て東にある群島の一つだ。
潮風が吹き、サンゴが広がる地域と考えると、グレートバリアリーフ近海を思い出してしまう。日本人にも関係すると言えばアラフラ海の木曜島だった。
日本は海に囲まれているから、恵比寿信仰は日本のどこでもある。海から来たものに感謝し、海に出ていく者たちを見送る。七福神の中でも唯一日本の神様だ。(大黒天などはシヴァ神)
災害も多いことを考えると、主人公たちや島の人たちがこうなるのは必然かという思いで書いた。自分は場面設定とキャラクターさえ思いつけば、いつの間にか話は動き出しているタイプなので、あとは演出(画作り)を考えていた。
小説のいいところは見えないところで、読者の脳に描くことができる最強のデバイスだ。
よかったら読んでみてほしい。
今回もkindleアンリミテッドにも入っているので、買わなくても読んでくれるだけでもありがたい。
よろしくお願いいたします。
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